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「ラスト・ソング」のその後

父の本棚(2)〜推理小説は楽しい〜

翻訳を始めた頃、指導教官に「訳文がジジくさい」と言われたことがあった。

言ったのが若者だったら仕方ないが、当時60代の、私から見れば立派な「ジジイ」から言われたからショックだった😨

 

実はそれより前、尊敬してやまない翻訳家に「どうしたら日本語が上達するか?」と御指南を請うたたところ、「夏目漱石などの優れた文章を毎日音読するといい」とアドバイスをいただいたのだ🙇‍♀️

 

他人のせいにするつもりはないけれど、川端康成で実行したのがいけなかったかな🙄 若い女子の作家例えば吉本ばなとか清少納言にしておけばよかった⁉️

 

今考えると、小説を訳すわけではなく実務翻訳なのでジジクサくて結構なのだけど、40代になったばかりの私、「加齢臭がする」と言われたくらいショックだった。

 

以来コンテンポラリーな作家の本をなるべく読んでいる。音読ではなく、最近は「書写」している✒️

時代を共有する作家の書いたものはやっぱり面白い🧡

 

少女時代の私に父は、やはり正統派の小説をすすめた。

推理小説あまり推薦されなかった(父自身、松本清張森村誠一なども読んでいたので「読むな」とは言わなかった)。

 

それでも推理小説は面白い。

最近は感動的なストーリーや秀逸な表現もあるので、読む価値はあると思う。

 

しかし、不満もある。

謎解きに不可欠な事実が、最後の「種明かし」になって初めて読者に知らされたりする。

これじゃあ、いくら考えても当たりっこないじゃん😕

 

このモヤモヤを吹き飛ばしてくれたのが、知念実希人さんだった。

知念さんの小説では、犯人またはトリック解明につながる鍵が本文中に全て開示されている。なので一緒に謎解きをすることができる。

短編の場合だと、たまに当たることもあって、それが楽しかった。

 

しかも知念さんは現役バリバリの医師なので、医学描写は本格的🩺💉

 

先日たまたま、知念さんの新刊を見つけたので買ってみた。

推理小説と思って読み始めて、あら😳

 

推理小説ではなく、コロナ医療に携わる医師・看護師たちの物語だった。

コロナはもう沢山!だったはずが、リアリティあふれるフィクションに引き込まれた。

 

コロナ禍で発熱外来を担当された知念さん、そこで経験し、見聞きしたことを、後世に伝えようと秀逸な筆力で書き下ろされたそうだ。

画像や番組では描かれきれない、医療人の内面までが細かく描かれており、ドキュメンタリー映画を見ているように一気読みしてしまった。

 

100年後まで読んでほしい、医療現場の必死な戦い。

心を病み、人生が変わってしまった看護師。

感染症の怖さは、その病原性だけでは語れない。

《限りなくノンフィクションに近いフィクション》

 

この本も、父の本棚に加えさせてもらおう。