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「ラスト・ソング」のその後

平成の健康番組

いわゆる “健康診断” 業務をしていたとき、検体と一緒に問診票というものが検査室まで回ってきた。

「現在、健康上の不安はありますか?」という項目に、「脳梗塞(肩こり)」と書いてあったものがあった。20~30代の人で、検査値では全くの健康体。文字の乱れもなかった。問診や結果報告は医師や保健師がするので、どのような様子なのかは不明だったが、どうやら視聴率の高い健康番組で、「肩こりのある人は脳梗塞に注意」…みたいなコメントがあったらしい。

その後も「血液サラサラの検査をしてください」とか「〇〇という病気かもしれない」という “訴え”が、テレビ番組の放送後にぞくぞく現れた。

 

それとは対照的に、血糖値、血圧、肝臓など、絶対に心配すべき人に限って、全く気にかけていない。「入れ替わればいいのに」と思ったものだ。

 

平成時代には健康番組が大流行した。

私は腰を落ち着けて見たことは殆どないが、父はよく見ていた。

 

まず最初に、こういう病気に年間何万人が罹る、とか何千人が死んでいる…と、低ーい声で視聴者を驚かせる。

そして、「こういう検査をすれば分かる」などと、テレビ映えする(イケメンまたは美魔女系)ドクターが説明する。

最後に「こういう運動を1日5分だけすれば大丈夫」とか「〇〇を毎日食べれば大丈夫」と結ばれる。

翌週には〇〇がスーパーの棚から消えた…ことも多かった。

納豆だったり、チョコレートだったり、赤ワインだったり、緑茶だったり、最近では亜麻仁油…だろうか?

 

いずれにせよ、程なく忘れられる。

…忘れなくてはいけないのだ。

父の場合は、わりとしつこく覚えていたので、朝の牛乳に、きな粉が入り、ゴマが入り、オリゴ糖が入り…、マグカップ半分ほどの牛乳が、飲むときには山盛りになっていた。お風呂の中でもあっちを揉んだり、こっちを叩いたり、お湯やシャワーの温度を上げたり下げたり、歯茎のマッサージをしたり…とタスク尽くめだったようだ。89歳まで生きたのは努力の賜物である。

 

さて、この流れは日本のテレビ番組の定番らしい。最近の新型コロナウイルス報道(ニュース)でも毎日のように耳にする。

「中国では何千人が命を落としている」と、武漢の病院の映像とともに始まり、

「検査法は今のところPCR法です。…今は時間がかかります」とドクターが説明し、

「このように手を洗えば大丈夫」「マスクをしましょう」と結ばれる。

そしてマスクや消毒液はドラッグストアから姿を消した。

 

同じではないか。ウイルスも、血液サラサラも。

いずれも科学者たちはいい加減なことを言っているわけではない。ウイルスの性質や人間の脂質代謝を踏まえた上で “理論的な” 予防法を教えてくれているのだ。

 

でも、実のところ「〇〇さえすれば大丈夫」というマニュアルなんて、本当はどこにもないかもしれない。ウイルスが浮いているところを見たことのある人はいないわけだし、亜麻仁油を毎日飲んだ人の血管壁の性質が(そうでない人に比べて)変わったのを目の当たりにした人もいない。

 

過去には、予防はウガイからと言われた。家に帰るとまずウガイ。うがい薬が売り切れ、テレビでは “正しいウガイの仕方” が伝授された。緑茶でウガイするのがいいと言われたこともあった。なので、外で喉が渇いても我慢して、家でウガイをしてから飲食した。でも今は、ウガイより “小まめに水分をとる” ほうがウイルス予防に効果があるとされている。

 

何年か後に新々々型コロナウイルスが現れる頃には、現在の予防スタンダードは変わっているだろう。

「昔はマスクが売り切れたよね」と言いながら防護服を着て歩いているかもしれないし、ビニール袋を被っているかもしれない。「髪の毛はウイルスの巣になる」からと、スキンヘッドが続出するかもしれない(実際、武漢の医療関係者は髪の毛を切っているらしい)。お酢で鼻うがいをするといい…なんてことになったらどうしようか⁉︎ 

こんなことを想像すると、是非この時期を乗り切って、次の、また次の流行まで長生きしたくなる。

 

取り敢えず今は、手洗い(とマスク)を徹底させよう。

 

さて、検査キットの登場が、秒読みまでいかずとも時間読みくらいになっているらしい。と言われるようになった。

 

簡易にできるようになれば、検体の搬送もいらないし、不安な気持ちを抱えて待つ必要もない。今までできなかった人もすぐにその場で検査をしてもらえるだろう。いいことずくめだけれど、「ハイ、陰性ですよ」と言われて、”実は感染している人” が人混みに解放されてしまう可能性も高くなる。新しい検査法ができても、ウイルスまたは抗体が捉えられなければ陽性にならないし、陰性の人でも人に感染させる可能性があるのは今までと変わらない。

 

チャーター機で帰国した人たちの例からも分かる通り、同じ人が3回目の検査で陽性に出ることもある。最初の2回は、検査法の感度に引っかからなかったせいもあるかもしれないが、ウイルスが潜んでいたことも考えられる。

 

新しい検査法が現れたあかつきには、患者に対する結果説明を徹底してほしい。

そうしないと、感染の拡大を悪化させることになりかねない。

 

「日本は新たなフェーズに入った」と言われているけれど、今のところは感染源は曖昧になっているものの感染者の追跡ができているので “まだ” “そこまで” 心配することはないかと思う。

 

せっかくの暖かさ。今のうちに外に出て、梅の香りでも楽しんできましょ。

 

追加情報:前回言及した、ノロウイルスの感染のしやすさは、個人個人の腸管のウイルスに対する親和性がファクターになるようです。つまり「素質」だそうです。

 

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桃?