アラサーのとき、クラシックバレエの発表会に出た。
子供たちの夏休みに合わせて、8月上旬だった。今ほど猛暑ではなかったのかもしれないが、その時の基準では十分に暑かった。
発表会の翌々日くらいだったろうか、保健所から電話がかかってきた。
発表会のお弁当で集団食中毒が発生したということだった。
後になって分かったが、教室の子供たち、保護者、スタッフ合わせて100人以上の人が「当たった」大規模な食中毒だったらしい。お店が有名だったこともあり、新聞にまで載った。私の記憶が正しければ、支店が一つ、二つ消えたらしい。これも私の記憶だが、腸炎ビブリオ(細菌)だったと思う。
聞くところによると、罹らなかったのは二人だけだったそうだ。
教室を主宰されている大先生と、私。
なぜビブリオ君はこの二人を避けたのであろう?
実は、私はお弁当を注文し損ねたのだった。仕方なしに自分でサンドイッチを作って、皆が美味しそうに茶巾寿司を食べるのを横目にサンドイッチを食べていた、単なる “マヌケ” だった。
しかし大先生に関しては、お弁当が来ないはずはない。ビブリオ君も人を見て感染するのかもしれない。(単に食べるヒマがなかったのではないかと思うが。)
感染症は、平等に人を愛さない。
ウイルスによって好みのタイプが異なるのだ。
顔はあまり見ないようだが、子供好き、スリム(栄養状態の良くない人)好みなど、体型にこだわりがあるらしい。
以前の職場の新年会のとき、大皿に生牡蠣が盛り付けられていた。牡蠣の食中毒が散発していた頃だ。
「大丈夫かな?」一瞬ためらう職員の前で、女医でもある課長が一喝した。
「牡蠣は気合ですっ!」
その迫力に皆、思わず頷き、牡蠣を食した。私の記憶では誰もあたらなかった。
その後、牡蠣の食中毒は “気合” ではなく、ノロウイルスが原因であることも分かり、罹る罹らないは “素質” によることも分かってきたと、前回の余白に書いた。
Covid-19は熟年好きのようにも見える。新聞やテレビで見る限り、「50代」以降の文字が目立つ。
クルーズ船はもともと乗客が熟年ぞろいだが、検疫官、厚労省職員、救急車職員など、関係者で感染した人たちも50代だった。職員はおそらくあらゆる年齢の人がいると思うのだけど。
市中感染でも、バス運転手、ガイド、タクシー運転手…50代が圧倒的だ。看護師は40代だったが、ケアにあたった他の看護師さんたちは感染しなかったのだろうか?
Covid-19には年齢を識別する能力があるのか? やはり気合もあるのか?
いやいや、Covid-19は若者にもアタックは試ているのだが、当たって砕けているのかもしれない。
人は見かけがいくら若くとも、若者に劣らない筋力があろうとも、頭脳が30代であろうとも、気合があろうとも、中身は日々加齢する。それは普段、我々が受ける「健康診断」の数値からは分からない。
病原体をやっつけるために出す物質は、年齢に正直に減っていく。高い化粧品を使ったり、エステに通ってアンチエイジングを施し、同窓会で自分だけ若い気になっても、Covid-19は同窓会の参加者に同じように感染する。
写真写りはごまかせても、病原体を前にしては年をサバ読むことなどできないのだ。
ただ、これら物質を出す能力は、人によって違う。もともと多い人は、年をとっても幾分は有利であろう。でも80歳の老人が20代に勝ることはない(と思う)。さらに薬で増やすことは難しいが、生活の状態により多少増えることもある(らしい)。だから前回書いたように、健康番組が人気を集めた。
若者よ、ウイルスに負けず、青春を楽しんでください。
でも、日本にたくさんいる中高年のために、感染は広げないでくださいね。
参考:中国の統計では(致死率):~9歳0%、~39歳0.2%、40代0.4%、50代1.3%、60代3.6%、70代8%で、男性2.8%、女性1.7%だそうです。