Last Song Latest

「ラスト・ソング」のその後

やっぱPCRでしょ!

父は3種類の新聞を読み比べるのを楽しみにしていた。

一つの事件なのに、一つの事実をありのままに報じているのに、新聞によって取り上げ方が違う。

嘘は書かれていない、記者の意見も書かれていない。でも、強調の仕方や記事の置かれた場所により、新聞社の思惑が伝わってくる。一つの新聞しか読んでいないと、いつの間にか読み手も新聞社の意見に染められる…こともある。面白くもあり、怖くもあった。

 

新型コロナウイルス報道をテレビのワイドショーで見ていて、似たようなことを感じた。

 

テレビでは、誰もが局の間を行き来できるし、テレビ局の意見に染められることはない。ボーッと見ていれば気がつかない。でも、興味のある事件だと気がつくものだ。

 

テレビの場合は、テレビ局の意見というより、コメンテーターやゲスト解説者の「質」に左右される。前回書いた、患者数についてもそれは言えた。

 

そんな中で私のお気に入りの解説者は、元国立感染症研究所研究員の女性だ。歯切れがいいのは、裏打ちされた知識があるから。検査の事情にも、検疫にも詳しい。ちょっとピント外れのコメンテーターの意見もピシッとコントロールし、決して流されない。彼女の目が光っているのか、彼女の出る番組では、意味の違う数字を足し合わせることもない(ようだ)。

 

午前中、彼女が出る番組をチェックし、午後、ふと違う局にチャンネルを合わせるとまた彼女が出ていることがあるが、洋服が違っていてとってもオシャレ。女子力も高い…とそれは関係ないのだけれど、テレビ関係者でもポイントが高いのだろう。”引っ張りだこ” の様子だ。

 

ちなみに、NHKは “あまり” 外部から解説者を呼ばない。

 

検査法として毎回紹介されるPCR法は、私がいただいた「退職のお餞別」のようなものだ。これが分かるおかげで翻訳の仕事もたくさんいただいた。研修に行かせてくれたM氏には感謝している。当時はウイルスに適用するのは厄介だったが、今はウイルスでも迅速に対応できるらしい。

 

一般人の皆さんは6時間程の検査時間を「遅!」と思われるようだけど、これだけ精度の高い検査がこんな短時間にできるのは凄いことなのだ。おまけに昔の検査だったら、こんな短期間に多数の検体が殺到したら試薬切れなどの事態にも陥っただろうけれど、PCRは複雑な試薬は(特に)必要ないので、「新型」のウイルスにも対応できる。感謝すべきことだと思う。おかげで日本は大きなパンデミックになっていない(今のところ)。

 

インフルで行うような簡易検査を望む声も多いけれど、偽陽性偽陰性が出てしまう検査では、再検査をする必要も出てくる。私は、このように重篤化する可能性があり、急に多量の検体が運び込まれる可能性のある場合は、やっぱPCRでしょ!…と思う。

 

今もあちこちの検査所で、電気泳動の機械の中を増幅された遺伝子が泳いでいるんだ…と思うと、ちょっと懐かしくもなったりする。