Last Song Latest

「ラスト・ソング」のその後

狐憑き🦊

コンコンコンコン…

私は子供の時から咳っぽい。一生のうちにする咳の回数が普通の人の10~100倍くらいあるのではないかと思う。

風邪をひくと、原因微生物が何であれ、喉から始まって鼻にいき(1~2週間)、その後咳が短くて1か月、長いと2、3か月続く。それも尋常な咳ではなく、狐に憑かれているんじゃないかと思うほどだったりする。咳のし過ぎで翌日、腹筋が痛くなり、痛いお腹をかかえながら、それでも咳をしていた経験も数知れない。
シュガーレスののど飴を作った人には頭が上がらない。

コロナ前、風邪の治り際に洋画の展覧会に行った。
何の展覧会だったか忘れたけれど、そこそこ混んでいた。
ある名画の前で、例の咳き込みが始まった。咳き込むだけ咳き込んで気が付くと、私の周りの人たちはどこかへ消えていた。コロナなどないときでも、他人の咳は不快感/不安感を呼ぶらしい。
今だったら学芸員が飛んできて、つまみ出されているだろう。

ヨガでも、俗に言う「スキのポーズ」をすると必ず咳き込む。
今はヨガはやっていないが、ボディーワークのクラスで似たようなストレッチが出てくると、できないことにして割愛させていただいている。
「咳の激しい方のご受講はお断りします」と書いてあるんだもん。

年齢を重ねると喉の繊毛が擦り切れてきて、おまけに粘液が減るので、何でもないのに咳き込むことが増えるらしい。花粉症で咳が出る人もいるらしい。
おまけに、私の場合、ちょっとしたはずみで唾液が気管支のほうに入ってしまうようで、ものを食べたり、人と会話をしているだけでも咳き込んでしまう。

コロナが流行してから、近所のスーパーに行ったとき、そこそこ混んでいた。
「ここで咳き込んだら、絶対嫌われるよね」なんて思った瞬間、唾液を飲み込んで咳き込んでしまった。
咳のことを考えるのもいけないらしい。

ただでさえこうなのに、最近の電車やバスでは窓が開いているので、温度の違う空気が流れ込んで、いつもより咳き込みやすい。止めなきゃと思いながら咳き込むのは、本当につらい。
コロナ禍の中、電車やバスに乗るのを恐れているわけではないけれど、車内で咳き込むことが怖い。

でも、このような世の中だからこそ、ほっこりした気分になれたこともあった。

先日、あるところで(例によって)咳き込んだ。
その時、目の前にいた方が、咳き込む私を温かい目で見守ってくださって、ようやく収まったとき「今時、こういうの困りますよね」のように言ってくださった。

温かいお心遣いが嬉しくて、私が男性だったらプロポーズしたいと思ったくらい(ご迷惑ですね)。
…いやいや、男女を問わず、このような方と一生お付き合いをしたいと思った。

放っておいてほしい人、かまってほしい人…人により様々だと思う。
ただ、苦しい最中に、咳を止める呪文でない限り、話しかけるのはNG。収まるまでそっとしておいてくださいね。明らかに "むせ" ている場合は、背中を叩くなどして、あまりに苦しそうだったら救急車を。

私の思うところでは、コロナでこれほど咳が出るとしたら、それ以前に熱が出ていると思う。
確かに無症状の感染者が咳き込んだらリスキーではあるが、そこら辺を歩いている人がウイルスを持っている確率は200人に1人程度(2月28日現在)。お互いマスクをしているわけだし、咳をしたくてしている人はいない。そんなに気味悪そうな視線を投げかけないでね。

欧米では、くしゃみをした人に「Bless You(神のご加護がありますように)」と言う。
咳き込んだ人には、欧米にも日本にもそういう言葉はないらしい。
早く堂々と咳き込める世の中になってほしいと切に思う。