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「ラスト・ソング」のその後

コトブキの鯛焼き

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デパ地下のたい焼き


最近の朝ドラの舞台は「回転焼き屋」だ。

回転焼きだけで一家3人生活できるなんて…
と思ったが、昭和40~50年代はそういうお店が一駅に一つはあった。

夏にはかき氷なども売っていたが、秋~春はあんこの入った大判焼き(と我が家の地域では呼んでいた)または鯛焼きだけが売られていた。私の記憶では当初20円程度、最後の記憶が100円程度だろうか。

昔は、今みたいに新奇なスイーツが次々登場することがなく、甘いお菓子が食べたい人は繰り返しそういうお店で買っていたから、お店が続いていたのだと思う。

学校から帰ってきて鯛焼き大判焼きがあると大喜びしたし、友達と遊ぶときも皆でお店の前で食べた記憶がある。ちょっとした集まりがあると、誰かがどっさりと買ってきて皆で頬張った。
香料や隠し味などない、小豆をコトコト煮て作ったあんこを、小麦粉を主成分とする皮でつつんだだけのスイーツは、飽きることなく、ワンシーズンに何十個も食べ、次のシーズンが来るとまた「待ってたのよ~」と買いに行ったものだった。

昭和40年代にはそうやって日本中にあった鯛焼き屋や大判焼き屋さんも、一軒、また一軒と姿を消していった。そういうお店は、朝ドラにもある通り、資金の少ない夫婦が細々とやっているものが殆どで、後を継ぐものもいなかった。夏には売れなくなってしまうだろうし、スーパーやデパートに卸すこともできず、口当たりの良い洋菓子に淘汰されてしまった形になる。

今でも残っているのは、人形町や四谷、根津あたりではないかと思う。ただしこれらのお店で買うときは、10匹以上で購入する人が多いため、「1匹ください」とは非常に言いにくい。並んでいる人たちも、何故かとても身なりが良い。もはや子供のおやつではなく、お客様や部下たちへのお土産にされている感じだ。

鯛焼き屋さんがあちこちの町から消えつつあるとき、「およげたいやきくん」という歌が流行った。
そのとき、我が町の鯛焼き屋さんが週刊誌に載ったらしい。
その後、何十年も、その鯛焼き屋さんが店をたたむまで延々と、「週刊誌でおなじみのコトブキのたいやきでございます。美味しいあんこが尾っぽのさきまでたくさん入っております」とテープの音声が町を流れていた(何百回も聞かされたので、セリフを覚えてしまっていた)。

グルメな祖父も、コトブキの鯛焼きの大ファンで、気が向くと仕事帰りに買ってきてくれた。祖父の場合はどっさり買ってきたので、育ち盛りの私は2匹くらい食べたと思う。祖父のお腹も、甘いものと美味しいもので、布袋様のようだった。

今、私が鯛焼きなどを食べたいと思うときは、デパ地下で買う。
最近はチーズとあんこの入ったものがお気に入りだ。カスタードクリームがあるときは、それもいい。

「邪道な!」

チーズ+あんこ入り鯛焼きを食べていると、後ろから祖父の驚く声が聞こえてくる…のは気のせいだろうか。

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