今年3月3日のブログの写真に写っているのは、築地にある鶏肉店である。
第二次大戦前の建物で、青緑色に見えるのは銅板を貼ってあるためだという。
この辺りの建物はこういう造りの建物がほとんどだったようで、今でも数件残っている。
父の育った家はこのすぐ近所だったという。
一度連れて行ってもらったことがあったが、正確な位置は忘れてしまった。隣だかお向かいだったかが料亭で、窓越しに芸者さんが見えたと言っていた。小学校の同級生は魚屋の倅か芸者の息子だったそうだ。
聖路加病院が近いため、この辺りは空襲を免れた…が、なぜか父の家の辺りだけ爆撃されてしまったと言う。B29のパイロットの気まぐれみたいなものだったらしい。ホント、運が悪い。
[ちなみに、聖路加病院を爆撃しなかったのはチャペルの十字架のおかげというより、戦争後、ここを進駐軍が使おうという魂胆があったからだ。実際、この辺りは戦後、外国人の居留地となり、市場のあった場所には外国人向けのクリーニング施設などがあったという。]
住む家を失った父の一家は、一時、親戚の家に身を寄せ、後に今、私が住んでいる家のある場所の土地を買ったと言う。当時は牧場や農地で馬や牛の糞がゴロゴロ転がっていて、芸者がそこら辺を歩いていた築地からすると、だいぶ田舎に来てしまった感があったらしい。祖父も通勤が遠くなって大変だっただろう。
さて、写真に写っている鶏肉店の話だけれど、ここの鶏肉はとにかく美味い❣️
どこかで特別に育てた鶏だけを仕入れ、ここでさばく。午前中に側を通りかかると、鶏肉を処理しているところが窓越しに見える(おそらく今でも)。
そしてここの鶏肉は、有名レストランや料亭が買いに来るほか、贈答用にもなる。
私の幼い頃も、祖父母を訪ねてくる人たちが、ときにお土産として、経木の大箱に入った鶏肉の詰合せを持ってきてくれて、その日の夕食は「鳥スキ」だった。子供の頃は分からなかったが、大人になってから食べてみると、鶏の味と香りがスーパーのものと比べ物にならないくらい濃厚だ。ここだけで売っている鶏肉のタタキなど、考えただけでヨダレが出てしまう🤤
もちろん自宅用に少量買うこともできる。前回のお茶同様、築地は多くの飲食店が仕入れに来る。高級店もだが、安いお店からも買いに来るので、売値は決して高くないのだ。
さて、少年時代の父は鶏肉が食べられなかったと言う。
昔はこの店のそばでニワトリを飼っていて、少年の父が見ていると、店の人が(おそらくわざと)そこにいるニワトリの首をポンとはね、首なしのニワトリが歩いている姿を見せられたからだそうだ。
今ではそんなことがないので、安心してください。
この店のすぐ近所には同じ屋号のウナギ屋がある。ここのウナギも美味しい。
特にメニューに載っていない「ウナ丼」が安くて美味しい。
かつて12月になると築地市場は一般の日本人で賑わった。
鰹節や出汁昆布、イクラや刺身など年越しの必需品に、贈答用のお茶や鮭…、大量に買い込む人たちで狭い道が溢れていた。
ここ数年、観光地化して、お土産屋さんや “バエる” 店ばかり増えてしまったが、東京オリンピックが( やってもやらなくても)終わればこの一帯はまた大きな変化にさらされる。
今冬は従来の雰囲気を感じられる最終シーズンになるかもしれない。
今年の年末は築地へGo!
もちろん、ウイルス対策は十分に行なってください。