以前に書いたように、この辺りの住民は買物難民である。
…にもかかわらず住みたがる人が結構いるのは、近くにある大きな公園のおかげだ。
ここは別名Chokin Park…貯筋パークと呼ばれ、ここにワンちゃんを散歩に連れてきたり、ジョギングをしたりする “ためだけに” 引っ越して来る人が多いらしい。
父も、この公園で毎朝コツコツ、貯筋をしてきた。
父がジョギングを始めたのは、私が生まれてからだと言う。
東京オリンピックの余波でスポーツ熱は高まっていたであろうが、まだフィットネスもスポーツジムもなかった(はず)。一人でできる体力づくりということで始めたのだろうが、もともと山歩きの好きだった父のツボにハマったらしい。
今のようにスタイリッシュなウェアもなく、ひたすら汗臭く、私の目にははっきり言ってダサかった。
平日の朝はこの辺りを走り回り、休日になると遠出をしていたらしい。
練馬に住んでいた従兄弟によると、父がひょっこり走って訪れたことがあるらしい。何キロくらいあるか見当もつかないが、電車を乗り継いでも小一時間はかかる距離だ。
母は、父のことを「前世は犬だったのよ」と言っていた🐶
こんな父に、我が家は振り回されっぱなしだった。
お正月ともなると、朝早く家を出て、なかなか帰って来ない。
家族はお雑煮に手をつけることもできず、皆、元日の朝から空きっ腹で「おあずけ」をくっていた。
旅先で走ってなかなか戻って来なかったこともあるし、マラソン大会の応援に駆り出されたこともある。
他人が走っているのを観るのも好きで、秋から冬の週末、我が家のテレビではいつも知らない誰かが走っていた。
クライマックスは、お正月の大学駅伝だ。
よく10時間も他人の走っているところを見ていられる…と傍観していた私も、大正大学の “山の神” こと、柏原くんの走りっぷりを見てからすっかりファンになってしまった。10時間に及ぶ、台本のない、何が起こるかわからない、そして演じる者たちにとっては命をかけたミステリードラマのようでもある。
今年は、どんなミステリードラマが展開されるのだろう。