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「ラスト・ソング」のその後

清潔もほどほどに?

四半世紀ほど前、日本に寄生虫ブームが起こり、目黒の寄生虫館がデートの若者であふれたことがあった。

私の職場でも、区民フェスティバルで寄生虫の展示をしようという話が持ち上がり、いつの間にか、どこからか、いろいろな寄生虫のホルマリン漬けが持ち込まれた。あれはキモかった。

誰がわざわざこんなものを見にくるのだろう…と思った。

 

が、意外なことに展示は人気を博し、多くのおじちゃん、おばちゃんたちが「回虫」のホルマリン漬けを囲んで「私も飼っていたのよね」などと、懐かしそうに語り合っていた。

…いやいや盛ってません。本当の話です。実際、私より一世代前の人たちに聞いて回ると、そのような経験談がいくらでも集まってきた。皆一様に、あたかもペットのワンちゃんの話をするかのように、目尻を下げて話してくれる。

 

地域差もあるようだが、私の世代あたりからカイチュウやサナダムシを飼わなくなったらしい。私は、小学校3年のとき、隣の席の子にもらったギョウチュウが唯一の寄生虫体験である。と言ってもギョウチュウの場合、セロテープの検査に卵が張り付いたというだけで、カイチュウのように虫体と対面したこともなく、実感は今ひとつ、懐かしさも湧いてこない。

 

この寄生虫ブームの火付け役は、「笑うカイチュウ」という本だった。

寄生虫の研究をしてきた先生が、ユーモアたっぷりに寄生虫を語った本で、ベストセラーになった。語り口の愉快な先生はテレビにも引っ張りだこになった。

これを書いた先生は、その後、日本が清潔な国になり、日本人の体内から寄生虫が一掃されたことが、各種アレルギーの原因になっていると説いた。

 

確かに、花粉症やアトピーに罹る人は、私世代を境に若くなるほど多い。

先生によると、寄生虫と共存した経験があるとアレルギーになりにくいらしい。キレイな環境で育った人ほど、免疫が持て余してアレルギー症状を起こすのだという(未証明だと思うが、もっともらしい理論が展開された)。

 

だからと言って、アトピーの治療にサナダムシの卵を処方されても飲めないし、アレルギーの治療に、サバを丸ごと生で食べる人だっていないだろう(とっても危険です)。ちなみにギョウチュウを数日飼っただけでは、花粉症は防げないらしい。私はしっかり花粉症になった。

 

私の考えでは、清潔になるために使われる化学物質が免疫を狂わせているのではないだろうか(個人の考えですが、同様の意見はあちこちで見られます)。

 

寄生虫は自然消滅したわけではない。肥料が人工肥料になり、農薬が使われるようになり、合成洗剤で野菜を洗うようになって退治された。これらは野菜などに微量に残り、私たちの身体に取り込まれることになった。

 

それだけではない。消臭グッズ、食品添加物、殺虫剤、便利な家庭用品、私の成長とシンクロしてじゃんじゃん増えて、これらを使うことで清潔さと快適さを獲得してきた。

 

これら化学物質は、毒性試験やアレルギー試験には合格しているはずだが、その物質を使った場合、数十年後にアレルギー体質を引き起こすかという試験まではされていない。

 

感染症が流行するたびに、抗菌・除菌をうたったグッズがドラッグストアの店頭を飾る。

だけど、本当に病原体を除去することができるベストな方法は、後に残らない消毒薬を、手洗い、拭き掃除など、シンプルな方法で使うことに限る。