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「ラスト・ソング」のその後

総合診療医

「ラスト・ソング」にも書いた通り、父がリウマチ性多発筋痛症を発病した頃、「総合診療医」という番組がテレビで放送されており、人気を博していた。私も、一回も欠かさずに視聴した。

 

ベテラン医師が交代で、自分の経験した(おそらく病名にたどり着くのに苦労した)症例を出題し、3人の研修医が病名を当てる。

研修医は、医師と患者の問診のやり取りの再現ドラマを見て、カンファレンスを行う。これを数回繰り返した後、正解(診断)にたどり着く。必要に応じて検査結果も示されるが、必要最小限しか示されない。

 

孤島で開業している医師が登場したときは、「このような検査をしたい」という研修医に「孤島にはそういう施設はない」と切り返したこともあった。実際、その医師は、昭和の開業医と同程度の情報から病名を探し出しているようだった。(後日、設備の整った病院を紹介していた。)

 

昭和の開業医では、このような診断方法が一般的だった。

目の内側の粘膜をひっくり返し、爪を見る。リンパ節を触診し、体内の音に耳を澄ませ、顔色を観察し、患者の話を熱心に聴く。精密検査が必要になれば紹介状を書いてくれたけれど、大体の診断はその場でつけられた。

 

今は、開業医でも多項目の血液検査を簡単に行うことができる。病院であれば、コンピュータの画面を操作するだけでオーダーを出すことができ、検査1時間後には血液検査も、画像検査も、結果が診察室に到着している。血液検査に必要な血液はマイクロリットル単位だから、項目を(不必要なほど)増やしても患者の負担にはならず、却って喜ばれたりする。

「せっかく取った血液だもの、なるべくたくさん調べてね」って感じ?

 

こういう場面ばかりに遭遇していると、総合診療医の診断方法は却って新鮮に見える。総合診療医でも、よりピンポイントに診断を下し、より良い治療を施すのに検査は必須だ。しかし、前回のブログに書いたように、検査が少ないほど患者の負担は軽い。災害時など、検査をせずに対処しなければならない場合は現代でも多いはずだ。

 

昭和の医院には診察券というものさえなく、患者の顔が診察券がわりだった。診察券が導入され、カルテが電子化されて、お医者さんは患者の顔を見てくれなくなった。

診察室に入ってから出て行くまで、お医者さんの視線は、画面中の検査結果→薬の処方→次回の予約・検査に向けられたまま。

 

本人がすり替わっていても気がつかないかも…?

直接来るより、スカイプのほうが顔を見てくれたかも…?

 

父の主治医は患者の顔を覚えていてくれて、待合室に「お出迎え」に来てくれた。先生は、TV「総合診療医」の医療監修でもあった。

 

TV「総合診療医」は、残念ながらもうレギュラー放送はされていない(下記 注)。医療従事者だけでなく、一般人にも意義深い番組だと思う。

このような番組が、また現れますように。

(注:時々、空き時間に再放送されることもあります。)