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「ラスト・ソング」のその後

マインド・ユア・メディスン

先日テレビで、最近の就活生は目薬を必ず持ち歩いているーという放送をしていた。

ある女子就活生は、目の疲れをとる目薬、目の充血を抑える目薬のほか、「ものもらいになりやすいんで、予防のため」の抗菌目薬の3本を携行し、嬉々としてさしていた。

これを見ていた私は、(様々な観点から)ゾッとした。

 

一番ゾッとしたのは、目薬を目にくっつけるようにして点眼していたことだった。

目薬の点眼口がまつ毛に触れていた。

添付文書にも書いてあるはずだが、目に近づけて点眼すると、まつ毛の細菌が目薬の点眼口に付き、目薬内に混入してしまう。目薬は保存料を含んでいないこともあり、pHや塩分濃度が人間の体液に近い、つまり生物が繁殖しやすい濃度になっているので、目薬に細菌が入ると細菌は増えまくる。つまり、目薬をさしているのか、細菌を注入しているのか分からなくなってしまうのだ。この就活生、ものもらいになるのはそのためじゃないだろうか?と思いながら画面を見ていた。

 

それはさておき、

売薬を買い、服用、使用する。それは悪いことではない。

だけど、薬を過信しているなぁと思う場面が多すぎる。一般人だけではない。お医者さまも。

 

父は晩年、血液の病気を発症し、重度の貧血となった。赤血球が人の半分ほどになり、立ちくらみだけではなく、吐き気までもよおした。

何度か吐いた後、病院の医師(最初の病気でかかっていたリウマチ科のオハギ先生)にそう告げたとき、先生に「吐き気を抑える薬を出しましょうか」と提案された。

これには目を丸くした。

吐き気を抑える薬は、中枢にある吐き気を催す神経を抑える薬だ。つまり脳に働きかける。そんな薬を安易に出して大丈夫なんだろうか? 吐き気をもよおしたのは貧血のせいだ。貧血による吐き気をそんなやり方で抑えてしまっていいのだろうか?

 

「それって脳に作用する薬ってことですよね?」という私の質問の意図を理解されたか、先生は「やめておきましょうか」と提案を引っ込められたけど、その後も通院時に家での状態を報告する度に「(その症状に対する)薬を出しましょうか?」と言われ、ついに私のほうでオハギ先生には病状を全て報告するのをやめてしまった。あの状態の父に睡眠薬など処方されたら危険ですらある。薬によっては貧血を悪化させることもある。

 

薬は生体に対して作用を持つ化学物質だ。

売っている薬は安全、お医者さんがくれる薬は安全、そう思っているから「これを服めば治るよね」と期待しながら薬を服む。でも、どんなに安全と言われていても、薬には生理作用がある。自分だけ特異体質でその薬が裏目にでることだってなきにしもあらずだ。過去の自分には効いたけれど、今の自分には有害になることだってある。薬自体が安全でも、先に述べた就活生の目薬みたいに、使い方を誤れば逆効果になることだってある。

目薬だって「薬」である。健康食品の目薬版ではない。眼に対して作用のある物質が入っている。目薬や軟膏などでは、基剤や添加剤に人体が反応することもある。

 

服用するな、使用するな、というのではない。

気軽に手に入るものをどんどん使って快適になるのは悪いことではない。むしろ手に入るのに敢えて手に入れず、不便さの悦に入っているのはどうかと思う。

でも、自分の身体に入れるものには慎重になるべきだと思う。

 

大衆薬を買うときはきちんと相談を。添付文書は必ず読んで。

医師に処方された薬は勝手にやめないで。自分が何を服んでいるかは常に自覚して。

「?」と思ったらすぐ相談を。

そして、お医者さまも薬は慎重に出されますよう、お願いします。

 

〔ちなみに、目薬には1回ずつの使い切り包装タイプのものもあります。コンタクトレンズの方、目に近づけないとさせない方は、こちらをどうぞ。〕