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「ラスト・ソング」のその後

マインド・ユア・メディスン Part.2

医薬品の乱用が問題になっている。

「今ごろ?」というのが率直な感想だ。

 

薬剤師の資格を取る前(昭和時代!)、ドラッグストアでアルバイトをしていたことがある。

チェーン店が広まっていない頃、個人経営のドラッグストアだった。

「トランコパール」という薬の中毒になってしまったおばさんが頻繁に買いにきていた。

目つきもだんだんおかしくなってきたので、薬剤師の資格を持つ経営者は、「仕入れるのをやめようかと思うんだけど、ウチで売らなくても隣の店で結局買ってしまうし」と悩んでいた。利益が減ることも懸念していたが、最終的に、薬を仕入れるのをやめた。

 

咳止めのシロップを買い求めるや否や、一気飲みしてしまった人を見たこともあった。

先日、テレビで取り上げられたのと同じ薬だ。主成分も変わっていない。

35年以上も経つ(!)のに、その間、問題にならなかったのだろうか?

その間、元号が2度も変わり、インターネットが広まり、薬事法が改正され、薬局の開店時間も長くなり、薬(いわゆるOTC薬)の入手がますます容易になった。その節目に、何故このような事態を予測し、止めようという流れがなかったのか。私ごときが知っていることを、製薬会社やお役所が知らないはずはない。

 

先日ネットニュースで見た医薬品は、入眠剤として父もよく処方されていた。私も時々おこぼれにあずかった。この薬の中毒になることはなかったが、あまりにも簡単に処方箋/薬がもらえるのには驚いた。

 

医薬品は、違法薬物に比べると中毒(依存症)になりにくく、有効性や必要性を考慮して問題視されることが少ない。今回だって、いずれ忘れ去られるに違いない。薬屋さん一軒が頑張ったところで止められない。薬屋は星の数ほどある。ネット上でも買える。

 

医薬品の中毒の場合は、違法薬物のように法律が助けてくれることがない。自分で気づき、自分で「断薬」しなければならない。薬によっては禁断症状までいかずとも、不快な症状を伴うことも多く、服用が長くなるほど断つのも大儀になる。良い医者は中毒にならないよう注意してくれるが、無責任な医師も多い(本ブログ 5/17 眼の話 その4)。

 

元気なうちはいいけれど、病気になって他の薬を飲むようになると、その薬の作用を強めたり、弱めたりする。怪我などをして緊急手術になったとき、麻酔が効きにくくなったり、出血が止まりにくくなったり(テレビで取り上げられた風邪薬の中には血液凝固を妨げる成分が入っていることもある)…ということもある。肝臓や腎臓にも負担はかかる。

さらに、このような経験をした人は違法薬物に対するハードルも低くならないだろうか。

 

「トランコパール」おばさんは、あの後どうしただろう?

咳止め中毒になった人たちは、やめることができたのだろうか?

 

私の拙い意見になるが、咳止めが欲しくなるほどしつこい咳に悩まされたら、医者に行くべきだ。医者に行くまでの数日間は大衆薬のお世話になってもいいが、なるべく穏やかな作用のものを求めた方がいいと思う。そして、熱のあるときは解熱剤だけ、咳のときは咳止め成分だけ…症状に見合ったシンプルな薬を選んでもらってください。

 

そして、中毒性があろうとなかろうと、化学物質の摂取は慎重に。