Last Song Latest

「ラスト・ソング」のその後

インストラクターを守れ

アベちゃんが全国休校要請をした直後、全国規模の某大手バレエスタジオが2週間の休業宣言をした。

スポーツクラブやホットヨガスタジオから複数の感染者が出た頃だった。

他のダンススタジオも続くかと思ったが、休業にまで踏み切ったところはなかった。

名前を知っているフィットネスクラブやダンススタジオ、ヨガスタジオをネット検索してみると、自主休業、一部休業など様々な対応をとっている。感染者を複数出したところは長期休業だ。

 

休みたくないのはどこも同じだろう。賃貸料は安くないだろうし、インストラクターやスタッフの生活もかかっている。返金が必要になることもあるだろう。でも感染者を多数出してしまうと、より長期に休まなければならなくなったり、会員も減ることにもなりかねないから、社運を左右すると言っても過言ではない。利用者側だって、なるべく頑張ってやってほしい。

 

しかし営業しながら対策をとるのは容易ではない。フィットネスマニアは多少体調が悪くても来てしまうものだ。厄介なことに、新型コロナウイルスには無症状の感染者がいる。さらに最近のフィットネスやスタジオには高齢者が多い。新型コロナウイルスの場合、感染者を門前払いするのは不可能。スタジオで “うつされる” 人を最小にしなければならない。

 

ここでなされるのが「リスク・マネジメント」というもの…らしい。

かいつまんで言うと、起こり得るリスクを予測して、最小にすべく対策を練ること…のようだ。

東日本大震災では、津波で多くの人が命を落とす一方で、避難して助かった人たちもいた。

安全神話に頼りきり、何も備えていなかった原子力発電所は最悪の事態となった。

クルーズ船は、初期段階での危機感の欠如が感染者を増やすことにつながった。

どれも、責任者が危機感をちょっとでも持っていれば、”最悪の事態” は避けられたのに。

 

各フィットネスやスタジオのウェブ上にある「新型コロナウイルス対策」を開いてみると、ちょっと見には同じでも、読むとだいぶ違う。

プロ・ダンサー/アスリート養成、エグゼクティブ仕様、一般市民向きなど、スタジオの存在目的による違いもあるのかもしれないが、人間の命に関わる意味では、基本的に同じはずだ。

 

どこでも知恵を絞って、利用者に対しては様々な対策がなされている。休会・退会を容易にしているところもあれば、清掃を徹底させると宣言しているところもある。スタッフには負担が増えることだろう。

 

だけど、インストラクターも利用者と空間を共有していることを忘れてはいけない。ウイルスにとっては先生も生徒も同じ「宿主」。インストラクターは(発熱でもしなければ)休むことも、辞めることもできない。インストラクターにも小さな子供や、介護すべき親がいるかもしれない。インストラクター自身が高齢のことだってある。高齢のインストラクターは精神性を重視する時代に生まれ育っているから、ウイルスごときに動じないスタンスをとっているが、コロナウイルスは精神力では退散しない。

 

仕事をあちこち掛け持ちするインストラクターが感染したら、違うスポーツクラブやスタジオにも感染が広がる。まず守るべきはインストラクターのはずなのに、「対策」からこぼれていることも多い。お金を払っている利用者は文句が言えても、お金をもらっているインストラクターから声が上がることはない。

 

クルーズ船では、感染しているのに仕事を続けざるを得なかったスタッフもいた。いくら乗客を隔離してもスタッフ対策をおざなりにしたため、感染を広めてしまった。

 

対策をしてもしなくても、リスクは同じ確率で訪れる。対策をしなくても案外平気だったりすることもある。でも「リスク・マネジメント」を行おうとする態度は、必ずどこかに現れてくると私は確信している。

 

フィットネスやスタジオを選ぶとき、通常はアクセスのしやすさ、施設やインストラクターの質が決め手になるけれど、これからは、時の流れをしっかり掴み、危機感をもって、それを形にしているところを選びたい。それが、きちんとしたスタジオを残すことにつながり、最終的に自分のためになるのではないかと思う。

 

不安傾向のあるネズミは長生きをするという統計がある。

不安から目を背けて逃げるだけではなく、不安に正面から取り組むことで、生きながらえるのが人間だ…と思う。