「ラスト・ソング」に書いたように、私は、両親の婚約指輪を失くしてしまった。
「ラスト・ソング」ではロマンチック(?)な物語をでっち上げたが、実はすごくショックで、申し訳なくて、それを誤魔化したかっただけのことだ。
父は婚約指輪のことなど忘れていたと言っていたが、無駄遣いの嫌いな父が薄給だった頃、どんな思いで母にあの指輪を買って贈ったのか、そのとき母はどんなに嬉しかったか…そんなことを考えると、いくら本人が忘れていたと言えども申し訳なかった。
指輪のことを思い出しては、心がチクチク痛んでいた。
ところが、あの指輪、見つかっちゃったんです!
父の三回忌を終え、銀行に行くついでにちょっと様子を見て…くらいのつもりで、貸金庫を開けた。菓子の空き缶に入れてあった母のブローチを持ち上げ、緩衝材として入れておいたコットンを退けて、下にあったモノを摘んでみると、銀色の指輪ではないか⁉︎ 「ん?」と見てみると、立て爪の中からダイヤモンドがキラリと瞬いているではないか。
「やぁ、お久しぶり⁉︎」
紛れもなく、あの婚約指輪だった。やっぱり私、粗忽者。
そう言えば、昔、我が家が空き巣の訪問を受けた後、父の部屋にあったお金がなくなったと警察に報告したのだが、何年か後、そのお金が部屋のどこかから出てきたと父が言っていた。父の勘違い(不注意)だった。
私は、父よりは注意深いつもりだったのだが。。
…警察の方がこのブログを読んだら、次に盗難届を出しても受理してもらえまい。
だけど…、
指輪を失くしたと銀行に届けたとき、窓口の人は記録簿のようなものを引っ張り出して照会し、確かに私が金庫に行った日にプラスチックケースに入った指輪が届けられ、それは警察に届けられたと言った。
それ、何だったのだろう?
100円程度のプラスチックケースだけでは警察には届けないだろうと思う。
違う指輪が入っていたのだろうか? いやいや我が家にそんなに指輪はない。
もう一人、私のような粗忽者がいて、同じ日に同じようなものを落としたのだろうか?
指輪の、イリュージョン???
ひょっとしたら、指輪を取得した人が「ラスト・ソング」を読んで、そっと金庫に戻しておいてくれたのだろうか? (それほど読まれていないはずですが。)
金庫があの世と繋がっていて、父か母が投げ返してくれた?
あるいは、次に金庫を開けてみたら木の葉が入っていた…なんて⁉︎
それはそれで面白いけど。。。
せっかく見つかったというのに、謎は深まるばかり。
ただ、あの指輪をネックレスにリフォームしようという野望は今はない。
私があの世に行くときまで大切に保管し、確かに両親に届けようと思う。