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「ラスト・ソング」のその後

(94)銀座の支那麺

ここ20年、木枯らしが吹く頃に必ず行くラーメン屋さんが銀座にある。

 

看板メニューは「だんだんめん」。

和風のスパイスがたくさん入っていて、ちょっとピリ辛

辛さは4段階。「だんだんめん」とだけ言うと、私好みの辛さバランスのものが出てくる。

脂っこくなく、しつこくなく、麺は細くて上品だ。

蒸し鶏入り、ザーサイ入りなどもあるが、男性客に人気なのは豚肉の唐揚げが入ったもの。

女性客は普通の「だんだんめん」を注文する人が多い。

 

私も、この店に限ってはライスもつけてもらう(無料)。

最後に、汁と一緒に食べるためだ。

汁を啜ると色々なスパイスの風味が楽しめるが、最後に残る柚子の香りが絶妙だ。

 

この汁を啜ると体がポカポカあったまって、初期の風邪だと治ってしまう。

ということで、冬の入り口には必ず訪れる。冬至にカボチャを食べるのと同じ、私だけの儀式。

夏は夏で、汗と一緒に暑さを吹き飛ばしてくれる、さっぱり味のラーメンがあり、これも絶品。

 

このお店は中央区を中心に幾つかの支店を持っており(どれが本店かは不明)、父とも入ったことがあったが、父も「うまいなぁ」と絶賛していた。

 

今年も空気が冷えてきたので、食べに行った。

相変わらずの混雑ぶり。入り口に消毒液があり、入り口が開放されていたが、中の景色は以前と変わっていない。

カウンターとなっている席の間隔は「密」。椅子がテーブルに固定されているから、これ以上間隔をあけられないようだ。アクリル板などありません😨

笑っちゃうほどの無対策。香の物やナプキンは共用として、そこに置いてあるし。

 

ちょっと引いたが、せっかく電車に乗って来たのだし…と、席に座った。

家に介護する老人がいたら、引き返しただろう。

 

隣の人と会話をするわけでもないし、麺を啜ってお汁がとんだとしても、その汁には唾液は含まれていないだろうし…と、自分で自分を安心させようとするが、それでもやっぱりちょっと心配。

以前は話し声やら啜る音やらで雑音だらけだった店内も、シーンとしている。

 

ラーメンが運ばれてくるまで、誰もマスクは外さない。

ラーメンが来ると、背中を丸め、なるべく汁をとばさないように注意深く啜る。隣に座っていたクマのようなオッチャンの背中が、みるみる小さくなって猫になっていた(熊猫?)

 

前回のダンススタジオとは対照的。お店が表立った対策をしなければ自分たちで気を遣う。日本人ですね😉

 

まあ、ラーメン屋・クラスターなんて未だ聞いたこともないし(そのために(?)クラスターリサーチしています)、ヤバいことがあればとっくに問題になっているはずなので、これで大丈夫なんでしょう。

食べ物の味がしなくなったらこのブログも削除します。公開されている…ということは大丈夫だということです。

 

それにしても、みんなも、ここのラーメンが食べたいんだなぁ。。

食べてみたい方は、是非お昼どきを避けて夕方にでもどうぞ。

コロナで寝不足

保健所に勤めていたとき、国の関係機関の職員が研修に来たことがあった。

 

ちょうど各種培地が揃っていたので、歓迎の意味を込めて腸内細菌検査(検便)をしてあげたところ、カンピロバクターという菌が見つかった。下痢などの症状はなく、健康保菌者だった。

カンピロバクターには、我々もなかなかお目にかかれない。検査室は大いに沸き立った。

が、ご本人は大層ショックなご様子だった。

 

病原微生物で “飯を食っている” 私たちにとって、「感染」は不可抗力の出来事だ。カレの場合は症状もないので、感染したとも言えない。病原菌というものは常に我々の周りに存在し、我々の体内に入り込むチャンスを待ち構えている。

 

が、関係省庁といえどペーパーワークを日常としている人にとって、自分の体内から食中毒菌が検出されるのは “あってはならないこと” だったらしい。

今思うと、我々は「感覚の違い」を学び、カレは「感染は誰にでも起こり得る」という貴重な経験をしたのだった。

 

新しい感染症が現れたとき、それに対する反応は様々だ。

警戒の度合いも、0(全くしない)か1(すごく警戒する)かではなく、0.25とか0.8だったり0.1005くらいだったり、いろいろな度合いが存在する。

…ということで、流行前には存在しなかった、リスク感覚のバリアが地球上のあちこちに生じている。

 

このバリアを作り出しているのは、先の例のような個人的なバックグラウンドだけではなく、コロナ後の環境によっても作られるようでもある。

 

私が登録しているダンススタジオは、対策がハンパではない。

自粛期間も、オンラインレッスンを展開するかたわらで再開時の準備を着々と進めていた。

自粛明けには一斉メールが届き、予約システムに登録を義務付けられた。私もすっかりデジタル化させられた。

 

スタジオに入ると、密を避けるためのあらゆる工夫が凝らされていて、マスクは “死んでも外すな” という趣旨のポスターが貼られ、地震があったら怖いくらい扇風機が壁に取り付けられていた。

レッスンの前後には換気&お掃除タイム。トイレに座ると、使用後は蓋を閉めて流せ…と、ドアに貼られたポスターに警告される。

 

全てが理にかなった対策であり、世間の状況に鑑みてアップデートされる。体温計も、今まで3回もモデルチェンジした。”最新の知見に基づいた” 消毒液が随所に置かれている。

 

医療機関とも連携しており、おそらくインストラクターやスタッフに症状が出たときやクラスターが発生したときは、措置が取れるようになっているのだろう。

 

欧米諸国だったら嫌われそうなほどの徹底ぶり。

が、日本人には安心感の象徴のようで、最近は予約を取るのが大変。12時過ぎても寝られない🥱

デジタル化を乗り切った高齢者にも夜更かしは試練なのか、最近、名物じいちゃんの姿が見えない(密かに心配してます)。

 

さておき、このようなスタジオに毎日のように通っていたら、ズボラな人でも潔癖になってしまうに違いない。

 

しかしスタジオがこのように徹底しているのは、狭い場所に多くの会員が集うからで、これをスタンダードにする必要はない。

 

実際、”普通の” 生活では、マスクさえ “皆が” “きちんと” していれば大丈夫なんじゃないか…と思ったりもする。

皆がマスクをすることでウイルスの飛散はある程度防げるから、床その他に付着するウイルスは以前より減っているはず。電車の吊り革で感染するなど、ジャンボ宝くじを当てるより確率が低いかもしれない。

それでも接触歴等不明者が連日半数以上いるようなので、対策はやはり必要。宝くじも、ずうっと買っていればいつかは当たってしまうし、初めて買った1枚が大当たり🎊することもある。

 

『私の意見では』、不特定多数の人が出入りする場所では責任者が(先述のスタジオのように徹底して)対策を取ればよく、一般の人たちはそれに従えばよい。自分のリスク感覚を他人にも適用しようとするのはNG…だと思う。

 

半年前とは違って、今は検査もすぐに受けられるし、感染症の病態や治療法も確立されつつある。”過度に” 恐れて、せっかく築いた人間関係をそこなってしまいませんよう😉

過対策と思えるような人にもその人なりの事情や考え方があると思うので、尊重してあげましょう。

 

ちなみに、マスクをせずに歩いている人がいたら、宇宙旅行帰りで地球上で起こっていることがまだ把握できていないのだ…と、私は思うことにしている。

 

感染しないに越したことはない。が、感染したとしても “罪” でも “恥” でもないし、今は(持病がなければ)すぐにどうにかなっちゃうものでもないのです。

 

そうは言っても、某国の大統領の場合は恥を知るべきだと思う。

日本だったら支持率ゼロになってもおかしくない状態。それでも支持者がいるというのこそ、感覚の違いというものなのでしょうか。

(92)共通の趣味

大学に入ってすぐの初夏、「薬草園実習」があった。

 

数人のグループに分かれて、大学に隣接する薬草園を見て回り、先生から説明を受けた。

都会の小さな薬草園。マンドレイクやケシ(モルヒネの原料)やアサ(大麻のもと)はさすがになかったが、ジギタリスやチョウセンアサガオくらいはあったと思う。

葉っぱを摘み取るとそこから独特な匂いを放つ植物が多かった。

 

数日後に試験があるとも言われた。今見た植物を「鑑別」し、学名などを答えなければいけない。

それまで植物に親しみのなかった私。植物の「顔」など、一回で覚えられるはずがない。

試験までの間、隙間時間に植物園に通って植物とお友達になった。脚は虫刺されの跡だらけになったが、試験はパーフェクトだった(と言っても、5問しかなかった)。香りが鑑別の助けとなったのを覚えている。

 

30代でイギリスにハマった私は、キューガーデンにも足繁く通った。

そこでは大航海時代に世界中から集められた植物が、大切に育てられていた。

イギリスでは滅多に見かけないイチョウの木も、元気に葉をつけていた。土壌から作り替えたのだろう。

セントポーリアも、ここでは野生の姿が見られる。どの栽培植物も、本来は野生だったということを思い起こさせてくれる。

 

学術目的の膨大なコレクションを抱えながらも観光客を惹きつける魅力に富んだキュー・ガーデンには、四季を通じて見所があり、同じ3月に行っても、春の訪れの早さによって黄水仙が咲き乱れていたり、クロッカスが群生して花を咲かせていたり。

真冬に行っても何も咲いていないと言うことはない(らしい…さすがに冬には行く気にならかった)。が、やはりベストシーズンは5月〜7月ごろだろう。

 

私の一番のお気に入りはロック・ガーデンだ。

岩がゴツゴツしているところに這うようにして、高山植物が可憐な花を咲かせていた。本来、山に咲いているはずの花たちが都会の真ん中で元気に花を咲かせているというのも、(後になって思ったのだが)すごいことなのだ。

 

イギリスには植物を楽しめる場所がたくさんある。貴族の邸宅、田舎のヒース、ロンドンの公園、そして個人の庭。

ロンドン中心部にあるチェルシー・フィジックガーデン(ここもオススメ❣️)も、オックスフォードにある薬草園も、郊外の花屋さんでさえ、豊富な種類の、珍しい植物に溢れている。

日本にはない植物を知るために、植物辞典も購入した。

 

父の蔵書にも、雑草や山野草の本が多い。

私の書棚にあるのと同じ本も数冊見つかった(買ったって言ってくれればよかったのに〜)。

父と植物の話をしたことはあまりなかったけれど、好みが似ているようにも思われる。

 

観賞用に丹精されたキクやバラよりも、小菊や野菊やノイバラが好き。花壇に整然と植えられた三色スミレより、道路の割れ目から出てきたスミレを愛しく思う。壮大な生花よりも野草の寄せ植えに心を動かされる。

サギソウやユキノシタを買って来たときの、父の嬉しそうな顔を思い出す。

 

家族ぐるみでそういう植物を見て回ったわけでも、家に植えてあるわけでもないのに、遺伝子は花の好みまで操作しているのだろうか。

 

自粛期間に、オランダにも植物園がたくさんあることを知った。シーボルトの祖国、シーボルトが日本から持ち帰った植物もある…とか⁉︎

植物園に行くには個人旅行をしなければならない…ということで、オランダ語の本も買った。

 

でもレッスン3から進んでいない💧

オランダは遠い。

 

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そこら辺に咲いている花たちの美しい写真や薬効だけでなく、文化や歴史にも触れてあり、無人島に行くときは持参したい一冊。

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「薬草カラー図鑑」のイギリス版。植物画だと大分雰囲気が違う。