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「ラスト・ソング」のその後

鶴の顔 

父と私は顔が似ていた。父と私の作る折り鶴の顔までそっくりだった。

シャープ(端正)な顔立ちとは程遠い、グシャっとした顔になってしまう。不器用で細いところがキレイに折れないのだ。

 

スイス人の友人に折り紙を教えたとき、彼女が “人生で初めて折った” 折り鶴の顔がシャープだったのに、私は愕然とした。初めて折ってもきちんと折れる人はいるのだ…と。

 

父は70代の頃、たまたま通っていた老人のサークルで「折り紙をやろう」ということになり、講師を呼び、毎週のように折り紙を折り、家に帰ってから数時間、復習をしていた。

 

私も、その数年前に折り紙にハマった経験があったので、分からないと相談されては一緒に折った。最初は鶴とか兜とか風車だったのが、複雑な動物となり、箱となり、さらにはお正月飾りを作ったり、サッカーボールを作ってきたこともあった。

ここまでくると、感心するしかなくなる。

 

ということで父の部屋には、その頃の作品やら、折り方図やら、折り紙やらが一緒になって大量に残されていたので、上手くできた作品や使えそうな折り紙だけを取っておいた。

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初期の作品

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ちょっと上達?

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最高傑作?サッカーボール。

先日、スイスに住む友人と15年以上ぶりに連絡を取ることができた。自粛時にせっせと参拝した明治神宮の御利益…のようでもあった。

なんと彼女は、私が教えた折り紙をまだ続けているそうだ。作品の写メを送ってくれた。

手の込んだ作品の数々が画面いっぱいに並んでいた。

 

彼女はイギリス人の旦那さまとスイスで暮らしていたが、その旦那さまは病気療養中だと言う。彼女は、「私は絶対にコロナにかかれない」と、大きなプレッシャーの下にいた。

旦那さまのお世話になっているインスティチュート(どういうものを意味するかは不明)に千羽鶴を飾ったり、子供たち相手に折り紙を教えることもあるという。

 

私は、父が残した折り紙の中から外国では手に入らなさそうなものをちょっとだけ、クリスマスプレゼントとして送ることにした。父の蔵書の山から折り紙の本を探し出し、ツリーを折ってカードを作った。父の残したガラクタ遺産が彼女の心の支えになってもらえれば、父も私もこの上なく嬉しい。

 

今までは親の介護のことばかり考えていたけれど、配偶者の介護で悩む年齢にさしかかってもいるのを感じた。二人っきりだとなおさら、親の介護よりずっと気が滅入ることだろう。

 

彼女のためにも、ウイルスの弱毒化変異を願わずにいられない。

折り紙でアマビエさま、作ってみようか。

 

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ウインター・ワンダーランド。私の新作です。