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「ラスト・ソング」のその後

What is ウスターソース?

かつて日本の食卓には、ソースと醤油のビンが常備されていた。

家庭だけでなく、学食、社食、デパートの大食堂…。

 

ウスターソースを、父は何にでもかけた。

味見をせずにかけてしまうので、私が文句を言ったこともある。

これは父に限ったことではなく、昭和の雑誌や新聞にはそういうオヤジの話がよく載っていた。

 

父は、ハンバーグやオムレツなどの洋食のほか、焼売や青椒肉絲にもかけたがり、半熟の目玉焼きにかけるのがお気に入りだった。ソースせんべいという、醤油の代わりにソースを塗った堅焼き煎餅をアンテナショップで見つけたときは、子供のように喜んでいた。

 

今になって思うと、父が少年だった頃に戦争が終わり、食事が西洋化した。その時に入ってきたソースに、新しい、ハイカラなものを感じたのではないだろうか。千切りキャベツにソースをかけるだけで洋風を感じることができた…みたいな。

なので、父の世代の人たちは、ウスターソースと一緒に少年時代のワクワク感やノスタルジアを料理にかけて味わっていたのかもしれない。

 

父の亡き後、我が家のソースはめっきり減らなくなった。

気がつくと賞味期限をとっくに過ぎていたので、新しいものを買いに行った。

同じサイズだとまた残ってしまうので、昔お弁当用に買っていた小さなサイズのものを探したが、ウスターソースはサイズのバリエーションがなかった。

 

どうやらウスターソースは、以前ほど人気がなくなっているらしい。

 

今は、料理にかけるものはソース以外にたくさんある。私はレモンやカボスの果汁をよくかける。ポン酢やニンニク醤油も使うし、ドレッシングも数種揃えてある。お惣菜やお弁当を買って来れば、それに合うソースがついている。

ウスターソースを常備しなくとも、何一つ困らない。

 

昭和時代に遡り、初めて海外(北米大陸)旅行に行ったとき、外国にはソースがないんだよ…と言われて驚いた。

トンカツを食べる時はどうするのだろうと思ったが、北米の食卓にトンカツが並ぶことはなかった。

“本物の洋食” を食べるときは、ウスターソースを使わないのだろうか…不思議だった。

 

その後、ウスターソースについて深く考えをめぐらせることはなかった。

やきそば、たこ焼き、お好み焼き、トンカツ…、ソースの合う料理はどれも日本料理だということから、日本人が醤油をヒントにして発明したんじゃないかとさえ思った。

 

それから数年後、初めてイギリスに行ったとき、レストランなどにウスターソースが常備してあるのを見て、ウスターソースの故郷はイギリスだということを知った。

どうやらウスターソースは、北米大陸より距離の遠い日本のほうに伝わってきたらしい。

 

しかし、その後イギリスに行ってもウスターソースをかけたくなるような料理に出会ったことがない。

が、中華料理屋に入ったとき、春巻にウスターソースがついてきたことがあった。

イギリスでは中華にウスターソースが使われている “らしい”(?)

餃子にもかけちゃうのだろうか? 謎は未だ解明されていない。