車1台がやっと通れる狭い道を、おばあちゃんが歩いていた。
おばあちゃんの背後から、自動車が時速100キロで走ってきた。
危ない!
でも、おばあちゃんは車にひかれなかった。
な~んでか?
…という漫談がある。
答えを言ってしまうとネタバラシになってしまうので、テレビか演芸場で堺すすむさんの漫談を聞いてください。(あくまで漫談なので、「ブレーキを踏んだ」はNGです。)
新型コロナウイルスは、この漫談で言えば、おばあちゃんだ。
我々人間は自動車だ。おばあちゃんは自動車より遅いはずなのに、自動車は追いつけない。気がついたら世界中で蔓延していた。それも、今週は3桁だった感染者数が翌週には4桁、5桁、6桁にもなっている…といった具合に。
ウイルスに足があるわけではない。タンポポの種のように羽もついていない。スギ花粉のように風で飛んで行くわけではない。人間のくしゃみに乗っかって飛んだとしても、たかが数メートル。人間が歩くより速く進むはずがないのに。
ウイルスが人間より速いのではない。人間が遅すぎるのだ。
そして、人間の行動を遅らせたのは人間の意識だ。
ウイルスを知り尽くした専門家がこんなにいるのに、賢い人は世界中にたくさんいるのに、揃いも揃って楽観視していた。「希望的観測」というバイアスがかかったのだ。
武漢の映像を見ていたはずなのに、世界中に上陸したのを知っていたのに、自分の国は大丈夫と思っていた欧米諸国。
感染者が出たのにパーティーをしていたクルーズ船。
マスクをつけていれば大丈夫さ…と、連休にさんざん羽を伸ばした日本人。
健康な人が来るのだから大丈夫…と、自粛要請下に営業しているダンススタジオ。
はたから見れば、後になって見れば絶対ヤバいのに、その時大丈夫と信じ込ませたのは「希望的観測」だ。ウイルスは自分たちより足が遅いから大丈夫さ!…と侮っていた。
いっぽうウイルスは、人間がコロナ疲れだ、コロナ慣れだ、コロナショックだと騒いでいる間も、疲れも慣れも驚きもせず、自分たちにできることを粛々と進めていた。
おばあちゃんは足が遅いから…と思い込んでいたトラック運転手の認識の甘さと同じ。
…おっと、ネタバラシしてしまったかも⁉︎
最後になぞなぞを一つ。
足があるのにウイルスより遅く進み、大きな脳ミソがあるのにウイルスより愚かな生き物は何でしょう?