東京の名産に「くさや」という、それはそれは臭〜い干物がある。
日本橋に生まれ、築地で育った父は、これが大好物だった。
子供の頃から食べている私も、大好きだ。
武蔵野で生まれ育った母は、この臭い食べ物をムシャムシャ幸せそうに食べる親子三代を、どう思って見ていたのだろう?
このくさやの干物、私が子供の頃は入手も容易だったようだが、父の晩年は、有楽町のアンテナショップか、この季節に代々木公園で催されるイベントでしか手に入らないんだよ…と言っていた。
アンテナショップで売られているものは、トビウオか何かから作られているようで、大型で身が厚く、美味しいことは美味しいのだけれど、くさやだけでお腹がいっぱいになってしまう。塩分量も多いし、焼き具合も難しい。
呑兵衛はこれを肴にして日本酒をちびりちびりと呑むのだろうけれど、我が家は下戸なので、大きいと持て余してしまう。
代々木公園で売られるものは、新島だか八丈島から運ばれてくるようで、地元での消費を目的としているので、小型で身もうすく、柔らかかった。鯵あたりから作られているらしかったが、我が家にはこちらの方がウケが良かった。
父は毎年、このイベントを心待ちにしていた。
葬儀のとき、棺に大好物を…と言われ、くさやがふと頭をよぎったが、身内しかいないとは言え、さすがに私もくさやを入れる気にはならなかった。
せめて仏壇に供えてあげようと思いつつ、イベントは年1回しかないし、くさやを買ってきて一人で焼くのも考えもので、なかなか叶わなかった。
家中が数日間、”くさや臭” に包まれるだけでなく、近隣にも匂いを放つのだ。
が、以前、築地散歩のブログを書いたとき、築地場外市場で、くさやの瓶詰を見つけた。
瓶詰めがあるのは知っていたが、美味しくないだろうと決め付けていた。
しかし、背に腹は変えられない(?)高いのと安いの、1個づつ買ってみた。
案外美味しかった。
家で焼いたものは熱いうちに食べないと硬くなってしまうが、いつまで経ってもソフトだった。
高いほうをすぐに食べ、安かったものをつい先日食べたが、大きな差はなかった。あまりの美味しさに日中、おやつ代わりに食べてしまったくらいだ。外出前には食べないほうがいいかも。
仏壇にもお供えした。仏壇の周りがくさやの匂いで包まれた。
ご先祖様、楽しまれただろうか。
また買って来るね❣️